We are alive
悠海ゆう(yuumi-yuu)
1.Introduction ―Dream―
彼は…いつか王立研究院に入りたいと思っていた。彼の星にある研究院に入り、荒地に植物を増やす研究をしながら知識を蓄える。できれば数年おきに転勤させてもらえるのが良い。色々な星を廻り、色々なものを見て、そして識るのだ。もちろん、その土地その土地で古くからの文献などを読み漁るのも楽しみではあるが…。なぜか彼はそれを仕事にしようとは考えていなかった。たぶん図書館関係に就職するのは、自分の場合は仕事とは言えなくなってしまうだろうと思っていたのだ。仕事をして生きていくからには人の役に立たなければならないと、過酷な砂漠に生まれ育った彼は知らず知らずのうちにその身に植え付けていたに違いない。
月日は流れ、現在彼は自身の知る喜びを人々に分け与えることによって宇宙の役に立っている。なんだか不思議だ。彼にとって、それは生涯解けない謎になるだろう。他ならぬ自分がそのような立場にいることが。
彼は王立派遣軍に入りたかった。生まれた星には、その関係の施設がたくさんあったから、彼は遠くに演習の様子を見ながら、そして任務に向かう引き締まった父の横顔を見ながら育った。その星に代々続いた家の主である父は、星を離れなければならない立場には幸いならなかったのであるが、父は息子がいずれ自分以上の軍人になって、主星の軍の要職につくことを願い、息子もその夢を自分のものとしていた。
今やその父はなく、本来であれば自分もとうの昔に草原の土になっているはずの時間が過ぎ去っている。自分は主星の派遣軍本部を一足飛びに飛び越え、軍の頂点、いや正確には敵も味方もなく、全ての猛る心を鼓舞する立場にある。自分がそれにふさわしいか、彼にはわからない。考えたことがない。しかし、その立場は自分にとっては全くふさわしいと思っている。あるがままの自分に与えられた力と受け入れてから、既に気の遠くなるような時間が過ぎている。
二人はそれぞれ全く違う場所、違う時間に生を受け、不思議な事にある日出合うことになった。