「ああ〜、忘れてました。手を離してしまってはだめですよ。オスカー。」
「え？あっ、まずい」
竿を落とした弾みで水際の木の枝まで糸が漂い、引っかかってしまったようだ。竿を引いてみるが取れそうにない。
「だめだな。ちょうどいい、今日はもう上がろう。」
糸を解きに行こうとオスカーが立ち上がったとき、
「あーっ、いたいた！もう、二人ともそんなところに座ってたら見えないじゃないですかあっ」
「ア…」
「へいか…？」
湖の入り口、森との境には炎の館の馬車と護衛官達。それらをバックにかけてくる金色の綿毛が見える。
「お二人とも、朝ご飯もって来ましたよ〜。一緒に休憩しましょう」
『ということは、昼食まではここにいるつもりだな』
『オスカーの糸を直しておかないといけませんね〜。それとも竿をもう１本用意した方が喜んでもらえますかね？』
二人は思わず目で語り、そして苦笑し合った。
日の曜日の森の湖。今日もきっと一日晴れるだろう。そしてこれからも晴れるだろう。
違う時間、違う場所。彼らが会ったのは不思議な偶然。でももしかしたら天使だけは知っていたのかもしれない。彼女に聞いたらきっと知らないと言うだろうが…自分が、ルヴァが、皆が、今ここにいることを彼女に感謝したいと、その体を優しく受け止めながらオスカーは思った。
END