「俺は…もしかしたら二度とあんたとこんな風に付き合えないかもしれないと思っていた。」
「そうですか〜？ふふっ。そんなことなかったでしょう」
「お嬢ちゃんが即位して初めて、追いつくどころか追い抜かされていたのに気づいて、一生懸命追いかけた。あんたのことは頭から抜けていた。」
「それが本気ということでしょう？」
「俺はあんたとお嬢ちゃんの本当のところは知らないからな。もしかしたら俺は横からかっさらうような真似をしたのかもしれない。」
「あんなに大胆に見えるのに本当は繊細な人ですね、あなたは。でも行動してしまうあたりはあなたらしいですね。」
「聞きたかったんだ。ルヴァ。…辛くはなかったか？だからといって今更彼女を手放したりできないが…もし俺があんたの心を痛めたんだったら、それだけは謝りたい。」
「オスカー、聞いてください。私はね、あなたのことも大好きなんですよ。」
「ルヴァ…」
いつもの大きな男が、今だけは年下の後輩に見える。
「あなたはちゃんと私のために気を遣ってくださったでしょう？私はあの時あなたの忠告を聞いたうえで自分の気持ちを整理したんですから。それまで待って下さってむしろ感謝していますよ。」
軽く頭を下げたルヴァに、それまで足を投げ出して座っていたオスカーは慌てて向き直り肩をつかんだ。
「やめてくれ、俺が頭を下げるつもりだったんだから。ルヴァ。」
「女王の恋をあなたは一度も否定しなかったでしょう。本気になったら奪うとおっしゃってそれを実現したでしょう。そのことが、大いなる力を持ちながらも本当はまだ１７歳の少女でもある陛下のお心をどれだけ支えているか。それをしたのが私の初めての後輩であるあなたで、私は嬉しいんですよ。」
肩に置かれた手をはずし、ルヴァは以前より落ち着いたフレアレッドの髪を軽く、本当に軽く一度だけ叩いた。あなたは手がかからなすぎて、こんなこともしたことありませんでしたね、もっともゼフェルにしたら怒られちゃいますけどね、と言って。
「ルヴァ…様」
一瞬、何年かの時間を忘れた。そうだ、この人が自分の聖地への入り口となってくれたのだ。そして、今も変わらない。